2016年4月に電力の小売全面自由化が実施されたことで、一般家庭でも契約する電力会社を選べるようになりました。中には、環境にやさしい再生可能エネルギーを多く発電に利用している電力会社を選びたいという方もいるようです。
しかし、何となく聞いたことはあるけど、電力自由化や再生可能エネルギーについて、詳しいことはわからないといった方も多いのではないでしょうか。ここでは、電力自由化や再生可能エネルギーの基礎知識や関係性などについて説明します。
基礎知識!電力自由化
電力自由化は工場やオフィスビル、デパートなどの高圧の分野では2003年の制度改正ですでに自由化がされていましたが、2016年4月1日から電力自由化の対象が一般家庭や小規模店舗にまで拡大され、日本国内のすべての家庭が電力会社を自由に選ぶことができるようになりました。
電力自由化が実施される前は、関東であれば東京電力、関西であれば関西電力など住んでいる地域によって電力会社が決まっている地域独占状態でした。電力自由化は、地域独占状態を見直し、電気の小売業に異業種からも参入できるようにすることによって価格競争を促し、電気料金を抑えることを目的とした制度です。
電力自由化で新規参入した小売り電気事業者は、経済産業省資源エネルギー庁のホームページによると、平成30年3月30日現在で467事業者です。PPS事業者(特定規模電気事業者)やガス会社、通信会社など幅広い業種の事業者が参入しています。また、従来の地域電力会社についても他のエリアでサービスの提供を開始しました。
一般家庭は、これら数多くの事業者の内で自分が住んでいる地域に供給している中から、料金の安い電力会社や環境への影響にこだわった電力会社など自分の好みに応じた電力会社を選ぶことができます。
どの電力会社を選んでも、安定した電気の供給や停電した際の復旧についてはこれまでと変わりはありません。送配電に関しては、今まで通り地域の電力会社の送配電部門、あるいは分社化された送配電会社が行います。皆さんが契約する電力小売会社は、受け取った電気料金から送配電を行っている会社に対して”送配電網の利用料金”である「託送料金」を支払っています。
再生可能エネルギーについても知りたい!
再生可能エネルギーは、太陽光発電や風力発電、水力発電などがあります。いずれも、自然界に存在するものを利用したエネルギーです。法律(※)では、「エネルギー源として永続的に利用することができると認められるもの」として、太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、大気中の熱その他の自然界に存在する熱、バイオマスが規定されています。
※エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律
再生可能エネルギーには、一度利用しても再生可能で、資源が枯渇せず繰り返し使えるという特徴があります。再生可能エネルギーは、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料と違い、発電するときに地球温暖化の原因になるといわれている二酸化炭素をほぼ排出せず環境に負荷が少ないエネルギーです。また、原子力発電などに比べ安全性が高いため、国も再生可能エネルギーの導入を推進しています。
再生可能エネルギーによる発電の課題は、既存の化石燃料による発電と比べて発電コストが高いこと、発電量が自然状況によって左右されてしまうことなどが挙げられます。発電コストについては、固定価格買取制度などによって徐々に下がっては来ています。
日本の2016年度の再生可能エネルギーによる発電比率は15.3%です。2011年度は10.8%であったことから、再生可能エネルギーによる発電は徐々に浸透しているといえます。しかし、自然環境の違いがあるとはいえ、ドイツの30.6%、イギリスの25.9%(いずれも2015年の発電比率)などと比べると少し物足りない数字です。
参考:
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再生可能エネルギーとその課題は?
目次再生可能エネルギーとは再生可能エネルギーの課題それでも再生可能エネルギーが必要な理由再生可能エネルギー普及のために再生可能エネルギーによる発電の仕組みと課題 ...
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日本の再生可能エネルギーの発電比率は高い?低い?
日本では2012年7月のFIT制度導入以降、再生可能エネルギーの導入が進んでいますが、諸外国と比べて導入状況はどうなのか、経済産業省で2017年12月20日に開 ...
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電力自由化で再生可能エネルギーの拡大へ!
電力自由化のための系統(送電線)の広域運用で、再生可能エネルギーも広域的な供給が可能になりました。再生可能エネルギーによる発電は自然状況により変動が大きいので、以前は各電力エリア内で電気を安定して供給できるよう、受け入れ枠が制限されてきました。これを、複数エリアで調整を行うことで、受け入れの制限を緩和できる可能性があります。
そして、消費者側の変化もあります。電力自由化で発電事業に新規参入した事業者には、再生可能エネルギーによる発電を積極的に行っている事業者も含まれています。再生可能エネルギーで発電された電力を利用したいという消費者がそのような事業者を積極的に選ぶことで、事業者間の競争から環境を意識した電力会社がより増えていくことが考えられます。
また、従来の地域電力会社に課されていた法律的な義務が撤廃されることで、小さな規模でも電力事業を始めることができるようになりました。そのため、バイオマスなどの再生可能エネルギーを利用した小規模発電所でも電力の供給が可能です。
日本では、エネルギー供給の8割以上を石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料に依存しています。これらの資源は、将来、枯渇する恐れもあります。そのため、今後、ますます再生可能エネルギーの需要拡大が進むでしょう。
ご家庭にあった電気会社選びを!
再生可能エネルギーは、自然界に存在するものを利用するため、資源が枯渇することがなく地球の環境にも優しいというメリットがあります。再生可能エネルギーを利用した発電は、原子力発電に比べても安全性の面で優れており、国も供給の拡大を推進中です。
しかし、環境に優しいのが良いとはいっても、より身近な家計への影響がある電気料金の方により重きを置く家庭も多くあるのではないかと思います。
環境も家計も大事にしたいという場合には、当サイトが提供するような電気料金の比較サービスを利用して、電気代が安くなる電力会社に目星をつけて、その会社について環境に対する取り組みを調べていくとよい結果が得られるのではないかと思います。
電力会社の環境に対する意識の表れとしては、電源構成(石油火力○%、石炭火力△%、水力□%など発電方法の割合)やCO2排出係数(一定量の発電をするのにどれだけの二酸化炭素を排出したかの数値)を調べるとよいでしょう。環境に対する意識が高い会社であれば、公式サイト上にどちらの記載も見つかると思います。記載がない場合についても、CO2排出係数は環境省・経産省公表の資料があるので、こちらを参考にするのも良いでしょう。