LNGなどの燃料価格の上昇が要因で、電力大手10社は4月の家庭向け電気料金を3月よりも値上げする見通しです。標準的な家庭の月額料金の上げ幅は、東京電力エナジーパートナーが72円程度で最も大きく、沖縄電力の57円、中部電力の52円、北海道電力の44円、東北、関西電力の各39円と続きます。
実は燃料価格の変動によって、同じ使用量であっても電気料金は毎月変わるのですが、電気料金に燃料価格の変動をどのように織り込んでいるのか、そして電気代を節約するにはどのようにすればよいのかについて説明したいと思います。
毎月の電気代の決まり方
電気代について、毎月検針があって使用量に応じて電気代が決まるというくらいの認識の方が多いと思います。実際はどのように決まっているのでしょうか。契約している電力会社や契約しているプランによって違いはありますが、基本的には以下の式によって決定されます。
電気代=基本料金+電力量料金単価×使用量±燃料費調整額+再エネ賦課金
基本料金は電気の使用量にかかわらず毎月定額でかかる料金です。契約しているアンペア数が大きいほどこの基本料金は高くなります。契約アンペア数が必要以上に小さい場合はブレーカーが落ちる頻度が多くなって不便ですし、必要以上に大きい場合は無駄に料金を払い続けていることになります。なお、関西電力、中国電力、四国電力、沖縄電力の家庭向けの基本的なプランには基本料金がなく、代わりに最低料金が定められています。
次の電力量料金単価×使用量が電気使用量に応じてかかる料金です。電力量料金単価は使用量に応じて3段階に定められている料金プランが多く、使用量が多いほど単価が高くなります。これは、最低限度の生活を守るためとオイルショックの経験から省エネルギー化を進めるためです。
そして次の燃料費調整額が燃料価格の変動を電気料金に織り込むための項目です。燃料費調整単価×使用量によって計算されています。この項だけプラスマイナスとなっているのは、燃料価格が基準より高くなったらプラスに、基準より低くなったらマイナスにするためです。燃料費調整単価の決まり方は後ほど説明します。
最後の再エネ賦課金は、正確には再生可能エネルギー発電促進賦課金といいます。これも単価×使用量によって計算されます。東日本大震災後に、太陽光発電などの再生可能エネルギーによる発電を推進するために導入されました。単価は毎年5月に全国一律の単価になるように経済産業大臣が設定します。当初の想定以上に年々値上がりしているのが問題になっている項目です。
燃料費調整単価の決まり方
燃料価格の変動を織り込む燃料費調整単価の決まり方について説明します。
毎月、原油・LNG・石炭それぞれの過去3か月間の貿易統計価格から平均燃料価格を算定し、それを基準価格と比べて2か月後の電気料金に反映しています。例えば、今は2月なので昨年11月~今年1月の原油・LNG・石炭の貿易価格を2か月後の4月の電気料金に反映させるのです。
各電力会社ごとに発電に使っている燃料の構成比が異なるので、平均燃料価格も電力会社ごとに異なります。そのため、電力会社ごとに冒頭で説明したような値上がり幅の違いが生じるのです。4月の値上がり幅が一番大きい東京電力は価格が高騰しているLNGが発電に占める割合が一番多くなっています。
LNGは環境負荷が少ないため、大気汚染対策を進める中国が輸入を急増させていて、価格が半年で2倍になっています。電力会社は長期契約を結んでいるので、すぐに価格が反映されるわけではありませんが、この傾向が続いているので影響は避けきれません。
燃料費調整単価については以下の記事でもう少し詳しく説明しています。興味のある方は参考にしてみてください。
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燃料費調整額ってどう決まるの?
電気料金の請求内訳をみてみると燃料費調整額という項目があります。月によって金額が増えたり減ったりしていますが、これはどのように決まっているのでしょうか。 目次燃 ...
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電気代の節約方法
燃料価格の高騰や再生可能エネルギー発電促進賦課金単価の上昇があると、電気使用量が同じでも電気代は高くなってしまいます。電気代を節約するには、単純に電気使用量を減らせばよいのですが、減らせる量には限度がありますし、無理な節約は長くは続きません。
そこで簡単な電気代の節約方法を紹介します。それは、電力会社を変更することです。電力自由化で、2016年の4月から一般家庭でも契約する電力会社を自由に選べるようになりました。既存の電力会社よりも基本料金が安かったり、電力量料金単価が安かったりして電気代が安くなる電力会社も多くあります。
新しい電力会社は電気代が安くなっても停電が多くなったりしそうで不安…という方も安心してください。電気を皆さんの家庭まで届けるのは引き続き同じ、地域の電力会社(の送配電部門、東京電力は分社済みで別会社)です。しかも、各発電所で発電された電気は需要場所まで区別なく混ざり合って届けられます。つまり、今でも新規参入した電力会社が供給している電気を一部使っている状態なのです。これは契約する電力会社を変更した後でも変わりません。
電気の比較インズウェブを利用して電力会社を切り替えた方の電気代節約額の中央値は13,033円(※)です。さらに、提携会社への申し込みでギフト券のプレゼントなどのキャンペーンを行っています。電気の使い勝手は今までと変わりません。電気の比較インズウェブで電力会社を変更し、電気代を節約してみてはいかがでしょうか。
※2018年1月利用者が入力した各月の電気使用量をもとにして切り替え前後の電力会社の年間の電気代を計算し、比較した結果より。節約額に燃料費調整額、再エネ賦課金、キャンペーン金額等は含まない。