2016年の電力小売全面自由化がスタートしてから、さまざまな特徴を持った電力会社が参入しています。電気プランやサービスで独自の特徴を打ち出したり、発電する電気の種類にこだわるなど、アピールポイントは各社それぞれです。電力会社がアピールするポイントの1つが電源構成なのですが、一般の人には少し耳慣れない言葉です。電源構成とはどのようなもので、電力会社選びでどのような意味を持つのか紹介します。
目次
電源構成とは何を示すもの?
電力自由化がスタートし、多くの電力会社が参入する中で電気を販売する会社の電源構成にも注目が集まっています。経済産業省は、電源構成の公表を義務とはしていないものの推奨する立場を取っており、積極的に公開する電力会社が増えている状況です。
電源構成とは、販売されている電気がどのような発電方法で作られているかの構成比率を表すものです。現在、日本全体の発電量の内訳は、経済産業省が発表している2019年6月分の電力調査統計によると火力発電が77.7%、水力発電が12.1%、原子力が7.5%で、その他を新エネルギーなどが占めています。東京電力エナジーパートナーが公表している2018年度の実績では火力発電が80%、再生可能エネルギーが3%、水力発電が3%、その他が9%で、再生可能エネルギーで作られた電気で事業者が買い取ったものであるFIT電気が6%という構成です。
電力がさまざまな方法で作られて提供されているのは、発電方法によってコストや安定供給のためのリスクが異なるからです。電力は社会を支えるインフラとして、価格や供給量が安定している必要があり、各社が設備や地域環境、資源調達、環境負荷などの観点から適切と思われるバランスで電源構成を決めています。この電源構成によって、災害時や資源国における政治状況や為替リスクなどの影響が異なり、最終的な電力価格や電力供給にも影響しますので、電力会社を選ぶ際にも大きなポイントになるのです。
電源構成で知っておくべき電気の種類と発電方法
電気にも種類があり、その発電方法にもさまざまなものがあります。電源構成について理解するために発電方法や電気の種類、それぞれの特徴について確認しましょう。
火力発電
火力発電は日本の発電量の大部分を占めますが、その燃料としてさらに石炭、石油、LNG(液化天然ガス)などに分かれます。石炭は価格が安く、海外事情による価格や供給量の変動が少ないですが、環境負荷が大きいことが短所です。LNGは温室効果ガスの排出量が少なく、地政学的なリスクも少ないですがコストが高いという欠点があります。石油は備蓄しやすく、出力を調整しやすい特徴を持ちますが、地政学的なリスクが高く、燃料価格も高くなりがちです。
原子力発電
原子力発電は、昔は日本の発電量の3割ほどを占めていましたが、2011年の東日本大震災以降に稼働がほとんど停止されている状態です。安全確認を確認し再稼働に向けた努力に取り組んでいます。原子力発電は、発電効率が良く環境負荷も少ないですが、トラブル時にはその影響が他の発電方法と比較できないほど大きいのが難点です。
水力発電
水力発電は、水が高いところから低いところへと流れる位置エネルギーを利用して発電しています。他の再生可能エネルギーは、発電量が不安定という欠点がありますが、水不足に陥らない限りは安定的に発電が可能です。しかし、ダムの建設による環境破壊などの問題点や大きなダムの維持費などコストの問題点などデメリットも多くあります。
再生可能エネルギー
今後、シェアを伸ばすことが期待されるのが、風力発電や太陽光発電、バイオマス発電などの再生可能エネルギーによる発電方法です。発電コストや供給量の安定など課題はまだまだありますが、環境負荷が小さいことや海外事情による変動が少なく、発電・送電における技術革新によって大きく成長する可能性があります。
電源の区分けと電源構成
電源には「ベースロード電源」「ミドル電源」「ピーク電源」の3つの区分けがあり、電源構成はここにも大きく影響します。電気は電気エネルギーのままでは貯める事ができません。蓄電池などの技術も進んでいますが、大容量の電気をそのまま貯める事は難しく、使うために必要な電気はその時に作って送電するという方法となっています。そのため、電力需要に合わせて発電の種類を選択しています。需要と供給のバランスで効率的に発電できるよう電源を区分けしコントロールしているのです。
ベースロード電源
ベースロード電源は、発電コストが安く、時間帯に関係なく安定的に稼働できる電源です。安価で安定的に発電できる石炭や地熱、水力などが主力で、震災以降は原子力をベースロード電源から外している電力会社が多くなっています。
ピーク電源
ピーク電源は、名前の通り電力需要のピークに合わせて利用される電源で、平日の日中など電力需要に合わせて出力を調整できるタイプの電源です。一般的に石油や揚水式の水力発電が用いられています。電力量あたりのコストは高くなりますが、ピーク時のみに使われるため、全体の発電量としてはそこまで多くはありません。
ミドル電源
ミドル電源は、ベースロード電源とピーク電源の中間に位置する電源です。価格が安めで、出力調整もしやすい電源という特性を持ちます。LNGやLPガスなどの利用が多いです。
これらの電源は電気の安定供給のために考えられていますが、電源構成によって「ベースは安いがピーク時は割高」「ミドル電源の供給が弱く、割高なピーク電源の使用が多くなる」など電力会社の特徴も見えてきます。
電力会社選びに電源構成を意識する
2016年に一般家庭向けの低圧電力が自由化となったことにより一般家庭でも電力会社を選択できるようになっています。現在、日本のエネルギーは80%近くを火力発電に頼っている現状です。火力発電は燃料を国内で賄う事が出来ないためコストがかかるうえに、CO2の排出が多いというデメリットがありますが、安定的な供給電源としては重要です。しかしながら、限りある資源と脱炭素社会に向けた国際社会の動きの中で日本も持続可能な社会作りを目指していかなければいけません。そんな中で、注目されている再生可能エネルギーですが、新電力会社は再生可能エネルギーの電源比率が大きい会社も多くあり、再生可能比率が大きいことがアピール材料となっています。電力会社を選ぶことが可能になったからこそ、電力会社と電気プランを選択する時には、電気の材料にも注目してみましょう。
多くの電力会社で電気の安定供給を維持するため、電源構成の中に日本卸電力取引所(JEPX)から購入した電気が含まれています。日本卸電力取引所(JEPX)とは、電気の売買を行う会員制の卸電力取引市場です。発電した電気は貯める事ができません。そのため、JEPXでは発電可能な需給計画に基づき、電気の売買が行われています。電気の需要に対して発電可能な量が少ない電力会社は、需要より多く発電できる電力会社がJEPXに卸す電気から購入する事になります。そのようにして、各電力会社は需要と供給のバランスを保っているのです。JEPXで販売される電気は需要が高ければ高騰し、需要が少なければ低落するので日々変動しています。そのため、JEPXで取引された電気は、私たちが毎日利用する電気代に深く関係してきます。契約する電力会社が安定した電力供給が可能な電力会社かどうかの判断材料として電源構成比率のJEPXで購入している電気の割合にも注目してみるとよいでしょう。
この記事のまとめ
電気は様々な発電方法によりできた電気がミックスされて家庭に届いています。自分の契約している電力会社がどんな材料で電気を作っているのか注目してみましょう。
- 電気には種類があり、電気の発電方法を示しているのが電源構成である
- 電気はベースロード電源、ピーク電源、ミドル電源と需要に合わせて発電をコントロールしている
- 電源構成は電力会社のアピールポイントとなっており、電力会社選びの参考となる
電力会社を選ぶ際にプランや価格を中心に選ぶ人が多いですが、電源構成もしっかり確認することが大切です。電源構成によっては、資源国の状況や技術革新によってプランや価格が大きく変わる可能性もあります。また、電源構成で再生可能エネルギーが多い電力会社を選べば環境保護にも消費者の立場から貢献することも可能です。電力会社を選ぶ際には電源構成にも注目する方法もあることをぜひ覚えておきましょう。