ACアダプターの付いたAV機器やDCモーターの扇風機など、電化製品を使用しているとACやDCという表記をみかけることが多いでしょう。これらの意味や違いをご存じですか。今回はACとDCについて詳しく解説します。
ACとDCの意味は?何の略なの?
ACは「Alternating Current」の略で交流、DCは「Direct Current」の略で直流のことです。どちらも電流を指す言葉ですが、その流れ方に大きな違いがあります。交流は向きが周期的に変化する電流で、1秒間に変わる回数を周波数と呼んでいます。それに対して、直流は向きが一定でいくら時間が経っても変化しない電流です。意識したことはないかもしれませんが、多くの人は日常生活のなかで両者を頻繁に用いています。家庭用のコンセントから流れる電気は交流で、乾電池やバッテリーから流れる電気は直流です。
イメージしにくければ、コンセントを挿すときはプラスとマイナスの極性を気にしないのに、乾電池をセットするときはプラス極とマイナス極を確かめることを思い出しましょう。後者はプラス極からマイナス極に向けてしか電流が流れないため、反対向きにセットしてしまうと機能しません。
なぜ家庭用のコンセントに届くのは交流なのか
家庭で使う電化製品は交流と直流のどちらで動いているかご存知ですか?コンセントから電源供給しているから交流、と思いきや直流で動くものが多いのです。したがって、電化製品を用いるときは、内部やACアダプターなどを用いて、交流から直流へと変換しなければなりません。この実情を知ると、無駄な処理を省くために、最初から直流で送ったほうが良いと思うのではないでしょうか。そうせずに交流で送っている理由は、直流で送ると電気のロスが大きくなってしまうからです。
電力は発電所から家庭に届けられるまでに送電線の抵抗でいくらか損失してしまいます。損失をできるだけ少なくするために、15~50万Vの超高圧にしてして送られるのですが、そのままでは電圧が高すぎて利用することができません。
そのため、送電の途中で通過する変電所で変圧の処理が実施されます。また、電柱に設置されている変圧器によっても電圧は下げられます。それらの処理の際に、どうしても電力のロスが生じてしまうのです。直流よりも交流の方がこの際のロスを小さくできるので、家庭での受電後に直流に変換する処理が必要であっても、送電には交流が用いられています。
交流のメリットとデメリットは?
交流のメリットは先にも述べましたが、変圧が容易であることです。発電所から送電された高電圧の電気を、住宅に近づくにつれて家庭で使用できる適切な電圧に簡単に調整できます。この特性を利用することで、設備にかかるコストを低く抑えられます。また、事故時の遮断を行いやすいこともメリットの一つです。交流の電圧はプラスとマイナスを交互に繰り返すため、わずかですが電圧と電流がゼロになる瞬間があります。そのタイミングを逃さずに遮断すれば、電気系統などに与えるダメージを小さくできるのです。
デメリットとしては、目標となる電圧を確保するには、より高電圧(√2倍)に耐えられる絶縁性能が必要になることが挙げられます。たとえば、100Vの電圧の確保には約141Vの電圧に対応した絶縁性能が必要です。電圧と電流がゼロになる瞬間は電力が発生していないことになるので、それをカバーするために目標より高い電圧をかけなければなりません。その分だけ、電化製品などに求められる絶縁性能が高くなります。
直流のメリットとデメリットは?
直流のメリットは、送電線の構成が単純なので設計にかかる負担が少ないことです。プラスとマイナスの電線を2本用意するだけで、どのような帯域の電圧でも送電できます。交流も同様の仕組みで送れますが、効率が良くないので異なる設計が採用されています。また、消費電力に対する有効電力の割合である力率を考える必要がありません。そのため、同じケーブルで交流より大きな電力を扱えるというメリットもあります。
一方、デメリットとしては、電圧を変えるのが容易でないことが挙げられます。そもそも直流は、向きとともに電圧を一定に保つことが特徴だからです。そのため、電流がゼロになる瞬間がなく、事故時の遮断などを柔軟に行えません。また、メンテナンスのコストが高いことなどもデメリットといえます。直流を生み出す電動機は接点部品が多いため、汚損や摩耗が進行しやすいです。そのため、清掃や交換といったメンテナンスの頻度が高くなってしまいます。