電力自由化に伴い、電気の購入先を自由に選べるようになりました。そのため、原子力発電に頼らない原発フリーの電気を使用したいと考えている人もいるかもしれません。ただ、問題はそのような電気料金プランが選択可能かどうかです。そこで、日本における原発の現状などを説明しつつ、原発フリーの可能性について解説をしていきます。
基本的に100%原発フリーの電気は使用できない
まず、現状としては一部地域(沖縄や送電線がつながっていない離島)を除いて100%原発フリーの電気は使用できません。以下にその理由を説明します。
水力発電や火力発電など電気を作り出すにはさまざまな方法があります。そして、電力自由化の恩恵によって、どの発電方法を採用しているかを確認して電力会社を選ぶことができるようになりました。ただ、仮に、水力発電のみを行っている電力会社を選べば、それで100%原発フリーの電気が供給されるというわけではないのです。
まず、自社の発電所を持っていたとしても、多くの電力会社はそれだけでは家庭への供給を賄い切れないという事実があります。そのため、不足分は卸電力市場などから調達することになり、そこで、原発由来の電気が混ざってしまいます。
それでは、自社の発電所だけで十分な電力を調達できる会社なら問題ないかというと、そういうわけでもないのです。なぜなら、たとえ水力発電だけで電気を作ったとしても、それを家庭に送るための電線はその会社が独占して使用しているわけではないからです。
電線は全ての電力会社が既存のものを共同で使っており、家庭に届く前にそれぞれの電気は混じり合ってしまいます。そのため、原発フリーの会社を選択したとしても、実際に自宅に届く電気は物理的に、原発由来のものを含んだ電気となるわけです。
再生可能エネルギーは原発の代わりになる?
環境にやさしい再生可能エネルギーによる発電が原発の代わりとして持ち上げられることもありますが、すぐに原発の代替となることは難しいでしょう。
再生可能エネルギーとは何かというと、永続的に利用可能なエネルギーのことです。たとえば、石油などの化石燃料は1回燃やせば使えなくなり、しかも地中に埋まっている埋蔵量にも限りがあります。それに対して、無尽蔵ともいえる太陽エネルギーや空中で循環を続ける風のエネルギーを利用すれば、永続的にエネルギーを得ることができるわけです。主な再生可能エネルギーとしては、太陽光や風力、バイオマス、地熱などが挙げられます。
ただし、再生可能エネルギーも万能というわけではありません。まず、安定した電気供給が難しいという問題があります。太陽光発電の場合は、夜間は発電ができませんし、風力発電も発電能力は風の強さに左右されてしまいます。また、日本の地理条件もあり、比較的普及している欧州と比べてコストが多くかかります。
そういった事情を考えた場合、再生可能エネルギーは現時点では原発を完全に置き換えるものとして利用することはできません。しかし、再生可能エネルギーの本格導入の試みはまだまだ始まったばかりです。今後技術の発展などによって、より実用性の高いものに発展していくことが期待されています。
再生可能エネルギーに積極的な電力会社もひとつの選択肢
もし、原発以外の電気を使用したいのであれば、再生可能エネルギーに積極的な電力会社を選択するのもひとつの手です。前述の通り、どの電力会社から電気の供給を受けたとしても100%原発フリーな電気を使うことは不可能です。しかし、実際に使う電気自体は原発由来のものが混じっていたとしても、発電に原発を使わず、再生可能エネルギーに力を入れている会社と契約を結ぶことは大きな意味を持ちます。なぜなら、そうした行動が増えると原子力発電所の稼働率低下や再生可能エネルギーの低廉化につながるからです。
ただ、問題は再生エネルギーに力を入れている会社がどの程度あるかです。日本の再生可能エネルギーによる発電比率は欧州と比べて小さいです。それでも、再生エネルギーに積極的な電力会社は少なからず存在します。そして、どの会社が再生可能エネルギーに力を入れているかは、電気を作る方法を示した電源構成を見れば一目瞭然です。電源構成の開示を行っているのはまだ一部の会社に過ぎませんが、公表されている会社を比較するだけでも電力会社選択の際の大きなヒントとなるはずです。
電力会社を選べる時代!
電力自由化前は一般家庭が電気を購入する電力会社を変えるには住んでいる地域を変えるしかありませんでした。しかし、今は違います。電力会社や電気料金プランを自由に選ぶことができる時代になったのです。それにも関わらず、いつまでも従来の契約に縛られ続けているのはもったいない話です。自分の納得のいく電力会社や電気料金プランを探してみてはいかがでしょうか。