2021年1月10日に電力会社各社の連合会である電気事業連合会は、全国的に厳しい寒さが続き電力需要が大幅に増加していることで電気の需給がひっ迫しているとう状況から節電の呼びかけを行いました。電力需要が増加しているという報道と同時に電気代が急に高くなったと驚いている人もいると思います。電気代が急激に高くなっている人は自分の契約する電気プランが「市場連動型プラン」になっていないか確認してみましょう。
目次
市場連動型プランとは?
電気プランの一つである「市場連動型プラン」とは、市場(日本卸電力取引所/JEPX)での電気の取引価格に連動して、従量料金単価が決まるプランです。通常の電気料金単価はあらかじめ「1kWhあたり○○円」と決められていますが、市場連動型の場合は、30分毎に変動する市場価格に合わせて単価が変わります。
日本卸電力取引所(JEPX)と市場連動型プラン
各電力会社は、電力の売買を2003年に設立された日本卸電力取引所(JEPX)で取引しています。JEPXは、電力の売買を行える国内唯一の会員制の卸電力取引所であり、電力会社は、JEPXで発電した電気の販売・調達を行っています。電力自由化がスタートする前は大手電力会社10社が発電、送電、小売を全て賄っていました。しかし、自由化によって発電、送電、小売はそれぞれ独立していくこととなります。2016年4月には電力小売全面自由化がスタートし、一般家庭向けの電気プランを販売する多くの新電力会社が参入しました。発電所を所有しない電力会社もJEPXで電気を購入し販売することができるようになったのです。
発電した電気は貯蓄して貯めておくという事ができません。電力会社は、JEPXで電力の売買を行い過不足が生じないように需要と供給を合わせるようにしています。各電力会社は事前に気象条件やこれまでの経験を基に「ある30分の需要計画」を提出し、需要計画と需要実績の差分(インバランス)が大きければ一般送配電事業者(大手電力会社)に清算するという仕組みになっています。また、供給量より需要量の方が大きければ当然、市場の電気の単価は高くなります。このような電力会社が電力の調達に係るコストは当然、私たちの電気代に反映されていきます。
「1kWhあたり○○円」と決められている電気プランに加入している人は、このような電力会社の電気の仕組みを考えることがあまりないかもしれません。しかし、電力の調達の仕組みを知ると、「1kWhあたり○○円」と決まっている電気プランを販売する電力会社の需給予測に失敗すると販売する電気代より購入する電気の方が高くなってしまい赤字になってしまうということも考えられます。しかし、「1kWhあたり○○円」と決まっていれば取引価格の影響を受けて私たちの電気代が高くなるという事はありません。
一方、市場連動型のプランで契約する人は、JEPXの30分毎に変動する市場価格に合わせて電気の単価が変動します。JEPXでの取引価格が利用者の電気代にそのまま反映されます。そのため、市場で販売される電気が高くなれば家庭で使う電気の電気代も高くなるということになります。
市場連動型プランのリスク!メリットとデメリットを理解しよう
2020年12月の中旬から2021年1月現在において、日本卸電力取引所(JEPX)の電力取引価格が高騰しています。これは、2月も続くと予想されています。電力需要の増加の主な原因は、寒波による電力需要の増加と火力発電の燃料であるLNG(液化天然ガス)の燃料不足です。それによってJEPXで取引される電力は高騰しており、市場連動型プランで契約する人の電気代も高くなっています。
市場連動型プランは、現在、市場で販売される電力の高騰というデメリットの影響を受けているような状況ですが、裏を返せばそれはメリットにもなりえる部分でもあります。市場連動型プランのメリット、デメリットを理解しておきましょう。
市場連動型プランのメリット
一般的な料金プランは「1kWhあたり○○円」とあらかじめ単価が固定で決められているいるので電力会社は価格設定をする時に、変動リスクに備えて高めの単価設定を行う必要があります。市場連動型プランは、市場の価格と連動しているため電力需要が少ない時間帯やタイミングで電気を利用すれば電気代を安くすることができます。
また、蓄電池を利用した方法になりますが、市場価格が安い時間帯に電気を購入し蓄電池に電池を貯めておきます。電気の需要が多く取引価格が高い時間帯は蓄電池に貯めた電気を使うなどの方法をすることで電気を賢くお得に利用するという方法もあります。電気の需要が少なく、電気の取引価格が安いときに電気を利用すればお得に電気を利用できるという点が市場連動型のメリットです。
市場連動型プランのデメリット
2021年1月の今もなお、JEPXでの電気の取引が高騰している状況はまさしく、市場連動型プランのデメリットとなる部分です。寒波による影響で電力需要が減る事がなく、電気の需給がひっ迫しているような状況では、電力需要が少なく電気の安い時間帯のめどがつきません。現代の生活で電気を使わない、という選択は難しいので、高騰する取引価格の影響をダイレクトに受けるという事になってしまいます。
また、市場連動型のプランは「昨年の今頃との電気代比較」を行ってみるという比較が難しいです。それは、事業を行う人にとって電気代経費の見通しが立てられないということになり、経営にとって不安要素となりなかねません。また、実際予想よりはるかに電気代が高くなってしまう、または、安くなってしまう可能性もあるのです。
市場連動型プランがある電力会社
市場連動型プランのある電力会社を紹介します。市場連動型プランは、従量料金が市場と連動するプランだけでなく、電源調達費など、電気料金の一部が市場と連動するプランを出している会社もあります。
2021年1月15日に経済産業省の資源エネルギー庁は、卸電力取引所価格が高騰しているということを受け、インバランス料金単価の上限を200円/kWhにするという措置を発表しています。各電力会社でもそれぞれ対応が発表されていたりしますので市場連動型プランで契約する人は確認しておきましょう。
従量料金が市場と連動するプラン
電力会社 | プラン名 | 対応 |
---|---|---|
エルピオでんき | 市場連動プランS | 新規の受付中止 他プランへの緊急変更措置 |
市場連動プランL | ||
自然電力 | SE debut | 電気代の値引き(30,000円上限) |
SE 30 | ||
SE 30 | ||
ダイレクトパワー | ダイレクトS | 通常20,000円の解約手数料を無料 |
ダイレクトM | ||
テラエナジーでんき | 市場連動型プラン | - |
ジニーエナジー | みどりプラン | きいろプラン、あおプランへの無料変更 |
ハチドリ電力 | 市場連動型プラン | 電気代の割引 |
電源調達費などが市場と連動するプラン
- ハルエネでんき
- みんな電力
- エフエネ
- めぐるでんき
- おトクでんきなど
- リミックスポイント
この記事のまとめ
2020年12月の中旬から電力需給がひっ迫している理由は、LNG(液化天然ガス)の燃料が不足したことの影響だとされています。LNG(液化天然ガス)は性質上、長期にわたる備蓄が難しいことに加え、調達が難航しています。国内でのLNG不足は、寒波の影響で中国や韓国をはじめとした東アジア全体でLNG輸入量増加、産ガス国の設備トラブル、新型コロナの影響でパナマ運河の通関手続き遅延などの悪条件が絡まったことにあります。市場連動型プランは、この電気代高騰の影響をダイレクトに受け電気代が急激に高くなってしまうリスクがあります。市場連動型プランのメリットとデメリットを知り電気プラン選びの参考にしましょう。
- 市場連動型プランは、市場(日本卸電力取引所/JEPX)での電気の取引価格に連動して単価が変わる
- 市場連動型プランのメリットは、電力需要が少ない安い時間帯に電気を利用すればお得に利用できる
- 市場連動型プランのデメリットは、電力需要が多く高騰する市場価格の影響をダイレクトに受けるリスクがある
2016年の電力自由化以降に多くの電力会社が電気の販売をスタートさせました。市場連動型プランも電力自由化以降の新しいプランになります。現在では、たくさんある新電力会社が特徴あるプランを販売しています。たくさんある電力会社から自分に合ったプランを見つけるのは難しいので、今の電気の使い方を入力して一度に自分の住むエリアで電気の販売を行う電力会社を比較できる一括比較サイトなどを利用し電気代の比較を行うことができます。どれくらい電気代が変わるのか確認してみるとよいでしょう。