2016年に電力自由化が実施され、消費者は電力会社を任意に選択できるようになりました。それに伴って、よく使われるようになった言葉もあります。「スマートグリッド」もその一つであり、スマートメーターと混同している人も珍しくありません。そこで今回は、両者の違いも分かるように、スマートグリッドの概要をまとめました。また、電力自由化との関係についても解説します。
目次
そもそもスマートグリッドとは?リアルタイムに電力需要を把握
スマートグリッドを日本語に訳すと「洗練された電力網」であり、まったく新しい送電の仕組みを指しています。これまでの仕組みの改良に留まるレベルではなく、抜本的に見直して再構築したものです。IT技術や新しい発電方法を組み合わせることで実現しています。主にIT技術が生かされているのは、リアルタイムでエネルギーの需要を把握するという点です。これにより、以前より効率よく電気を送電できるようになりました。
日本で広く知られるようになったのは電力自由化がきっかけですが、スマートグリッドの歴史はもっと古いです。2000年頃から、すでにアメリカによって精力的に検証実験が実施されてきました。それに触発されるように、ヨーロッパ諸国や日本も実用化に向けて取り組むようになったのです。既存の概念に捕らわれない電力網であるだけでなく、再生可能なエネルギーを推進する一面もあるため、これからの時代にマッチした仕組みとして注目を集めています。
電力供給を効率的に!スマートメーターが活躍
スマートグリッドを運用するには、最新の電力技術とIT技術を駆使しなければなりません。そのなかでベースとなる仕組みは、電力を発電する場所と使用する場所を結ぶネットワークです。発電所で発電された電気は変電所を経由して送電されていますが、光ファイバーなどでも家庭や工場のような電力消費地と接続しています。そのネットワークを通じて取得したデータを生かして効率的に電力を供給するのです。配電盤に取り付けられた従来の電力計でも、月間の消費電力や積算の消費量を把握できます。しかし、リアルタイムで消費電力を知ることはできません。
それを可能にする機器として普及しつつあるのがスマートメーターです。このスマートメーターは、スマートグリッド社会の構想の中では、すべての家庭やオフィスなどに設置することになっています。この機器がネットワークを介して、消費電力の情報を電力会社にリアルタイムで送信してくれるためです。送られてきた時点で、電力の供給先である地域の電力を集計できるようになります。その結果に基づいて、電力消費量の予測を正確に行うことにより、無駄が生じないように発電量を制御できるというわけです。
スマートグリッドの大きな役割は、電力の効率化で地球温暖化防止につなげるということです。最近では各家庭や工場などに太陽光発電などの再生可能エネルギーを用いた分散発電機器や燃料電池、蓄電池、電気自動車など電気を貯蓄する機器を設置することも増えてきています。家庭や工場などで発電し自家消費で余った電力を電力会社に売電することもできるようになっています。地域の発電所、工場や会社、家庭で発電された電気を地産地消で有効に使う事が出来れば、大規模発電所で作られた電気を送電線を通して遠くの工場や家庭に届ける過程で発生する電力ロスを少なくすることができるためCO2排出削減にもつなげられるという考え方があります。しかし、そのような地域で発電した電気を有効活用する分散型電源の構想は、スマートグリッドの仕組みを上手く取り入れなければ実現しません。
分散型電源と再生可能エネルギー供給の安定化
スマートグリッドは単なる電力供給の手段ではなく、複数のメリットを持っています。先述のように、リアルタイムの情報を生かすことにより、電力供給の合理化や最適化が可能です。これは再生可能エネルギーが抱える問題の解決にもつながります。再生可能エネルギーの発電量は、日射量や風力のような自然の条件によって大きく変わりやすいです。それに加えて従来の送電の仕組みでは、正確な需要予測ができないので、供給が不安定になりやすいという問題を抱えています。そういった問題の解決には、太陽光などの家庭や工場で発電した電気を蓄電池に貯めておき夜間や災害時に使用できるようになることが理想です。家庭や工場で発電した電気は蓄電しながら自家消費します。蓄電することが出来れば貯めた電気を電力会社や隣の家庭に売電したり融通することもできます。そうすることで電力会社からの電気使用を少なくすることで無駄な送電を最大限カットすることが可能になります。発電しすぎた電気を蓄電池に蓄電しておくことで無駄なく電気を利用することができるということです。その需給予測をコントロールするためには、スマートグリッドのシステムが欠かせません。
もちろん、供給の安定化には、クリーンな自家発電のシステムの積極的な導入も関係しています。これにより電力消費に対する再生可能エネルギーの割合が増えていけば、地球環境の改善にも大きく貢献できるでしょう。そして、これまで発電所で生まれるのが当然であった大量のCO2を削減できるでしょう。すなわち、スマートグリッドをインフラにすることは、地球規模の環境対策という観点からも重要な取り組みといえます。
電力自由化との関係!他の地域への売電も可能に
十分にスマートグリッドを理解するには、電力自由化との関係性を押さえておくことも大事です。電力自由化によって、電力会社が電力を供給できるエリアは以前より広くなりました。地域の電力消費の集計をリアルタイムで行えるスマートグリッドは大いに活用されることになるでしょう。各地域に適量を効率よく送電できるので、これまでの範囲を越えた売電を行うことも難しくありません。電力業界を活性化させる明るい兆しといえます。
新たに参入する事業者が増えて、市場は拡大しています。たくさん存在する電力会社が、広範囲のさまざまな地域を対象とするので、需要と供給の調整も高度化していく可能性が高いです。たとえば、余ってしまった電力を他の地域の売電に速やかに回せる仕組みなども作られるでしょう。さらに細かな調整を行えるようになると、再生可能エネルギーを受け入れてもらえる余地も広がりやすいです。クリーンな発電システムしか持たない小規模な事業者でも、多くの消費者に売電を行えるチャンスが出てきます。このように、再生可能エネルギーの普及を推進することにもなるのです。
この記事のまとめ
スマートグリッドとは、IT技術を取り入れた次世代電力網です。リアルタイムでエネルギーの需要を把握することで、効率よく電気を送電できるような仕組みです。電力ロスを減らしCO2の排出を削減していくことが最大の目的です。
- スマートグリッド社会は、スマートメーターの設置が不可欠となる
- スマートグリッドは、再生可能エネルギーの拡大に不可欠なシステムである
- スマートグリッドは、電力自由化と深く関係している
スマートグリッドは電力自由化に伴って広がっていくことになります。普及したとき、新しい送電の仕組みを理解していると、電力会社変更の参考になるでしょう。その頃には、再生可能エネルギーの利用が増えていることも期待されます。