電力自由化を語るとき、発送電分離を切り離すことはできません。発送電分離とは、字が示す通り発電と送電を分離させることです。
電力自由化によって、電力の小売りは自由化されましたが、発電した電力を需要者に届けるには既存の送配電網を利用する必要があります。電力の送配電のためには巨大な送配電網の建設・保守が必要で、同じ地域で複数の会社が整備するよりも1社に独占して行わせた方が総合的なコストが下がるため、現在と同様に地域独占と料金規制が敷かれる方針だからです。
そのため、すべての電気事業者が公平に送配電網を利用できるように、発電と送電を分離させる必要があるのです。
発送電分離の4つの方式
発送電分離には4つの方式があります。
1.会計分離
送配電部門の会計を他の部門の会計から分離させる。日本では、2003年からこの方式がとられてきましたが、中立性に疑問が残ります。
2.法的分離
送配電部門全体を別会社化する。日本は2020年4月にこの方式へ移行することを目指しています。他にフランスやドイツの一部で採用されています。
3.所有権分離
送配電部門の別会社化に加え、発電・小売会社との資本関係も解消する。電力会社が国有の国での事例が多いです。
4.機能分離
送配電設備は電力会社に残したまま、送電線の運用・指令機能だけを別組織に分離する。アメリカの一部の州で採用されています。
日本では法的分離を目指していますが、この方式によって送配電が完全に中立になるわけではありません。企業グループ内で資本関係にあるので、グループ内の発電・小売会社を有利に扱うということが起きやすいためです。そのため、発電・小売業務との兼職の禁止や人事異動の制限などの規制が必要となります。
発送電分離のメリット・デメリット
メリット
分離することによって公平性や透明性がまし、発電や小売部門が活性化することが期待されます。また、既存の電力会社も管理コストが減ることでその他部門への投資がしやすくなります。
デメリット
一元的に管理されてきたものを新たに会社を作って分離する必要があるので、配送電の効率性が落ち、様々な経費が増加します。
また、自然エネルギーを利用する新規参入社が消費地から遠く離れた場所に発電所を建設した場合、消費地までの送配電設備への新規投資が必要になって、コストが増加することも考えられます。