愛知県名古屋市に本店を置く中部電力は、2019年7月1日から「CO2フリー」の電力を提供するメニューの受付を開始しました。CO2といえば、地球温暖化の原因である二酸化炭素のことで、環境問題に関係あるメニューであることがうかがえます。「CO2フリー」、つまり「CO2を含んでいない」電気を使うプランとは、一体どんなものなのでしょうか。詳しく解説していきます。
目次
「CO2フリー電気」を使用できる!「CO2フリーメニュー」の概要
中部電力の「CO2フリーメニュー」とは、CO2の排出量がゼロの「CO2フリー価値」がついた電力を使えるというものです。中部電力が供給する電気は、主に火力発電によって作られています。LNG(液化天然ガス)火力が全体の55%と最も高い割合を占め、次に石炭火力が22%です。火力発電は、発電するときにCO2を排出します。その一方で、発電時にCO2を排出しない大規模な水力発電は全体の6%、再生可能エネルギーによる発電は3%と、決して多くありません。(中部電力2018年4月1日~2019年3月31日の発電・調達電力量(kWh)実績値より)「CO2フリーメニュー」は、この貴重なCO2フリー電気の価値を販売するメニューということになります。中部電力の出力3万kW以上の水力発電所で発電された電気55%と再生可能エネルギーの発電所で発電された電気45%に由来するCO2フリー価値の提供となるのです。
「CO2フリーメニュー」は、中部電力の高圧または低圧電力を利用しているユーザーが加入可能です。高圧電力は、高圧業務用電力または高圧電力を使っていることが条件で、店舗や工場を持つ企業などが当てはまります。低圧電力は、「ポイントプラン」「おとくプラン」「とくとくプラン」など、中部電力が提供しているさまざまな家庭用プランが対象です。つまり、企業でも個人でも契約できるオプションプランだというわけです。「CO2フリーメニュー」に申し込むと、電力使用量1kWhにつき4.40円(10%消費税込)の料金が加算されます。
【 CO2フリーオプション料金単価 】
単位 | 料金単価(10%消費税込) |
---|---|
1kWhにつき | 4.40円 |
「CO2フリーメニュー」に加入すると、実際の電気料金はどうなる?
中部電力の「CO2フリーメニュー」に加入すると、1kWh の電気を使うごとに4.40円(10%消費税込)が料金単価に加算されます。家庭での電気の使用量は世帯人数などによって変動しますが、環境省の資料によれば年間で1世帯あたり4397kWhが平均です。ここに「CO2フリーメニュー」の単価をかけると、4.40円×4397kWh=19346.80円となり、年間で1万9000円ほど電気料金がアップすることになります。加算料金の1カ月平均価格は19346.80円÷12カ月=1612.23円で、1カ月あたり約1600円アップです。
実際に、中部電力の「ポイントプラン」を契約している家庭が「CO2フリーメニュー」に加入したときの月額料金についてみてみましょう。まず、年間の平均電力使用量を12で割って1カ月あたりの平均を算出すると、4397kWh÷12カ月=366.42kWhとなり、1か月に366kWh使用するとします。次に、中部電力の「ポイントプラン」で契約容量を30A、使用量を平均値の366kWhとしてシミュレーションしてみると、基本料金は858.00円です。そこから最初の120kWhまでの使用量に適用される第1段階の料金は21.07円×120kWh=2528.40円です。120kWhから300kWhまでの使用量に適用される第2段階の料金については、25.54円×180kWh=4597.20円となります。さらに、300kWhをこえる使用量に適用される第3段階の料金が28.49円×66kWh=1880.34円です。(消費税10%)
第1段階から第3段階の料金を合計し計算すると、2528.40円+4597.20円+1880.34円=9005.94円となります。この電力量料金に基本料金とCO2フリーオプション料金が追加されます。さらに、燃料費調整額や電力を使ったぶんだけ再生可能エネルギー発電促進賦課金がかかってきます。それが、毎月請求される電気代となりますが、今回は、燃料費調整額や再生可能エネルギー発電促進賦課金を含めず考えます。
通常であれば、30Aの基本料金と366kWhの電力使用量であれば、9863.94円の請求となります。しかし、「CO2フリーメニュー」の料金は、電力使用量にCO2フリー価値分(4.40円/1kWh)加算されるため、9863.94円+(4.40円×366kWh)=11474.34円となり、約16%も電気代が高くなってしまいます。
【ポイントプラン+CO2フリーオプション 30Aの料金単価】
区分 | 単位 | 電気料金(10%消費税込) | |
---|---|---|---|
基本料金 | 30A | 1契約 | 858.00円 |
電力量料金 | 最初の120kWhまで | 1kWh | 21.07円 |
120kWhをこえ300kWhまで | 25.54円 | ||
300kWhをこえる | 28.49円 | ||
CO2フリーオプション料金単価 | 1kWh | 4.40円 |
【30A 366kWh使用の場合の電気代】
ポイントプランの場合 | ポイントプラン+CO2フリーオプション | |
---|---|---|
基本料金 | 858.00円 | 858.00円 |
電力量料金 | 9005.94円 | 9005.94円 |
CO2フリーオプション料金 | ― | 1610.40円 |
1か月の電気代 | 9863.94円 | 11474.34円 |
1年間の電気代 | 118367.28円 | 137692.08円 |
※燃料費調整額及び再生可能エネルギー発電促進賦課金が追加で請求されます。
※電気料金の合計額は円未満切り捨てで請求となります。
CO2フリー電気を使うと電気代が高くなる?料金以外のメリットは?
このように、「CO2フリーメニュー」は電気料金が高くなるプランです。しかし、高圧業務用電力や高圧電力を利用している企業にとっては、料金以上の大きなメリットがあります。それは、「地球温暖化対策の推進に関する法律」の「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」において、CO2排出係数をゼロとして算定できることです。CO2などの温室効果ガスを多量に排出する事業者は、事業によってどのくらいの温室効果ガスを排出しているのかを算定し、国に報告することが義務づけられています。排出量が明らかになることで、「どのように温室効果ガスの排出を削減していくか」という対策が立てやすくなるわけです。
さらに、この集計結果は国によって集計ののち公表されます。ほかの事業者と比べて著しく排出量が多ければ、マイナスの印象を持たれかねません。逆に、削減に成功していれば、環境問題に真剣に取り組んでいる事業者だというイメージアップにつながります。この「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」は事業者が対象ですので、個人が自宅で使う電気には関係ありません。しかし、地球温暖化は地球で暮らすすべての人々に関わってくる環境問題です。たとえ電気代が高くなっても、身近なところから地球温暖化を抑止できるのはすばらしいことです。CO2フリー電力を使うことで、子どもや孫たちが暮らす未来の地球ために貢献できるとなれば、料金に見合った価値があるのではないでしょうか。
新電力会社やほかの大手電力会社にも「CO2ゼロ」プランが登場!電源構成に注目しよう
中部電力をはじめとする大手電力会社以外の新電力会社も、再生可能エネルギーで作られる電力の比率を増やしたり、実際にCO2ゼロの電力を提供したりしています。エコな電気を使いたい場合は、電力会社の「電源構成」、つまり「電気がどうやって作られているか」に注目するといいでしょう。発電に使われる再生可能エネルギーは、水力や風力、太陽光、バイオマスなどがあげられます。
また、従来からある大手電力会社でもCO2ゼロの電気を使えるプランが登場してきています。たとえば、関西電力では水力発電を利用した法人向けの「水力ECO(エコ)プラン」が設定されました。九州電力には、高圧電力のユーザー向けに水力と地熱発電による電気を使える「再エネECOプラン」があります。このようにCO2ゼロは電力の新たな付加価値としてニーズがあり、注目を集めています。
この記事のまとめ
中部電力の「CO2フリーメニュー」は、契約するだけで地球温暖化抑制に取り組めるプランだといえます。事業を行う企業だけではなく、個人でもCO2ゼロの電気を使えるのが大きな魅力です。
- 中部電力のCO2フリーメニューは対象のプランにCO2フリー価値分の料金単価が加算となるオプションメニューである
- 事業者はCO2排出係数を減らすことで企業のイメージアップになり、電気料金以上のメリットが見込める
- CO2フリー電気を使う事で、一般家庭でも地球温暖化の防止に協力できる
CO2フリーメニューに契約すると、電気料金が高くなりますが、省エネやエコに対する意識を高められるという側面も出てくるでしょう。こうした点から、環境問題に対して身近なところから取り組みたい人にぴったりのプランです。新電力会社は、再生可能エネルギーで発電した電気を中心的に販売している会社など様々です。環境問題を考えていかなければいけないこれからの時代は、電力会社の電源構成などに注目し電気プランを選ぶという事も大切かもしれません。電気の比較インズウェブの一括比較サイトでは、電力会社の電源構成についても掲載していますので電力会社選びの参考にしてみましょう。