電力の自由化を受け、自然エネルギーを供給する電力会社を選ぼうという消費者のニーズが高まりつつあります。このような流れを後押しする流れのひとつが「パワーシフト」です。この記事では、パワーシフトとは何であり、どのような影響をもたらすものなのか、また自然エネルギーを供給する電力会社の種類について紹介します。
目次
電力自由化により注目されている!パワーシフトとは
パワーシフトとは、自然エネルギーを中心とする社会の実現に向けて、電力(パワー)のあり方を変えていくことです。ここでいう自然エネルギーとは水力・太陽・風力・地熱・バイオマスなど、自然の力を利用した再生可能エネルギーのことです。パワーシフトへの取り組みは電力自由化を機に、多くの環境団体や消費者団体により広められつつあります。この自然エネルギー由来の電気を使いたいという声を企業や個人に働きかけて広めていく活動を、パワーシフトキャンペーンと呼びます。主旨に賛同する人は、企業や団体、個人などを問わず、誰でも参加できることが特徴です。パワーシフトキャンペーンで紹介される自然エネルギー由来の電気を供給する電力会社は、以下のような点が重視されています。
- 原子力発電所や石炭火力発電所から電気調達を行っていないこと
- 電源構成や環境負荷などの情報を一般消費者に開示していること
- 再生可能エネルギーの発電施設からの調達が主であること
- 大手電力会社と資本的な関与がないこと
- 地域や市民が主体となって作られたエネルギーであること
パワーシフトキャンペーンは、このような自然エネルギーを供給している電力会社を応援し、地域や消費者の「自然エネルギーを使いたい」という多くの声を政府に伝え、持続可能な社会を目指したパワーシフトに向けた政策が促進されることを主な目的としています。
パワーシフトがもたらすよい影響
では、パワーシフトがうまくいくことでどのような影響があるのでしょうか。これは環境面だけでなく、地方における課題とも関連しています。具体的に起こりうる良い影響を2つ紹介します。
環境にやさしく持続可能な電気である
1つめは、環境への負荷を抑えながら発電できる点です。例えば、石炭火力発電所ではCO2の放出が問題となっています。CO2を排出することによって環境に負荷がかかることは、多くの人が知っていることでしょう。また、原子力発電においてはCO2の発生はないものの、放射性物質が与える影響が懸念されます。なんらかの事故が生じたときに、人や環境に対する甚大な危険を及ぼします。これらの発電方法に対し、CO2の発生がなく放射性物質も扱わない自然エネルギーは、環境破壊リスクが少ない電力発電として注目されています。
また、再生可能エネルギーは石油や石炭、天然ガスといった有限な資源である化石エネルギーではなく、自然界に常に存在する太陽光や風力といった自然のエネルギーから作り出される電力のため持続可能なエネルギー源であると言えます。持続可能な社会を目指して、私たちの生活を維持するために、環境に優しく持続可能なエネルギー源であるという点は、注目すべき点と言えるでしょう。
地域に雇用が生まれる
2つめは、地域に雇用が生まれることです。自然エネルギー発電所を建設することで、建設や設備機器の製造、運転、メンテナンスなどのために人員が必要になります。日本よりも自然エネルギーの普及が進んでいるドイツでは、化石燃料よりも多くの雇用が生まれたという例もあります。日本でも自然エネルギーを導入すれば、同じような効果が期待できるでしょう。特に、仕事の少なさが課題となることも多い、地方への雇用が生まれることは重要なポイントです。自然エネルギー発電所の多くは、資源や土地が豊富な地方に建設されることが予想されます。これにより若者の雇用の場が生まれれば、地方活性化にもつながると期待できるでしょう。
自然エネルギーを供給する電力会社の種類
自然エネルギー(再生可能エネルギー)を供給する電力会社にはいくつか種類があります。それぞれの特徴を紹介します。
自治体系新電力
各自治体が出資もしくは運営に関わり、再生可能エネルギーの地産地消を目指しています。自治体の公共施設などで供給を目指す働きが多く見られますが、一般家庭への供給を目指す自治体も少なくありません。高齢者の見守りサービスや子育て支援など、それぞれの地域の課題解決にも結びついていることが特徴です。
民間企業による地域新電力
地域のガス会社や再エネ事業者などが既存顧客とのつながりを生かしつつ、地域活性化や地域の再生可能エネルギー利用を目指しています。自治体と連携して公共施設などへ供給するパターンも多く、上記の自治体新電力に近い形で運営されていることが特徴です。
生協系新電力
生活共同組合では消費者が組合員となり出資や運営を行っています。食料の共同購入が主な事業ですが、その中でエネルギー問題に取り組んでいるところも多く、電力に参入している組合もあります。販売対象となるのは組合員のみであることが特徴です。
再エネ事業者などによる地域横断的新電力
比較的規模の大きい会社やベンチャー企業などが運営しています。一定の地域のみではなく全国的なつながりをベースとしていることが多く、各種サービスや環境問題への取り組みなど独自色を出しながら展開を行っているのが特徴です。
自然エネルギー普及の課題
自然エネルギー(再生可能エネルギー)へのシフトがエネルギー問題における持続可能な社会を目指す中で重要なポイントとなりますが、課題もあります。太陽光・風力などの再生可能エネルギーは、発電電力量当たりの発電コストが割高であるという課題があります。また、自然エネルギーは、太陽光を例にとっても日照時間などの自然状況に左右されるといった理由から安定した電力供給が難しいという課題があります。
世界では、太陽光発電、風力発電を中心に再生可能エネルギーの発電コスト低減化が進んでいます。日本国内では、2017年度の実績によると再生可能エネルギーの導入割合は16.0%です。世界に比べ発電コストが高いという点が普及が進まない理由として挙げられますが、発電所の建設費や機材の低減化を進め国の目標では2030年までには再生可能エネルギー比率を22~24%に伸ばすことを目標に取り組みが進んでいます。また、再生可能エネルギーが自然状況に左右されることでの安定供給への懸念もバランスのとれた再エネ発電所の導入を進める事で解決に取り組んでいます。
この記事のまとめ
パワーシフトとは、電気(パワー)を自然エネルギー由来の発電電気に変える事です。電力小売自由化によって企業も一般家庭も使う電気を選べるようになりました。環境問題に関心が高い人は、一般家庭でも自然エネルギー由来の電気を販売する電気プランに変更することが可能です。
- 再生可能エネルギーは、環境に優しい
- 再生可能エネルギーは、常に自然界に存在するエネルギーのため持続可能なエネルギーである
- 再生可能エネルギーが普及すると、地域の雇用も増加する
一般家庭でも自由に電力会社を選べるようになった今、どの電力会社を選ぶかによって環境に配慮していることが示せるようになりました。今回紹介したように、自然エネルギーを中心とする新電力はさまざまな形で全国に広がりつつあります。電力会社を選ぶときは、自然エネルギーを供給する会社も候補に入れてみてはいかがでしょうか。
自然エネルギー由来の電気は、環境に配慮した発電由来の電気であるため、発電コストが割高な傾向にあります。そのため、自然エネルギー由来の電気プランは、電気料金単価が割高になっていることが多いです。自然エネルギーを提供する電気プランに変更する際にはシミュレーションを行い電気料金に納得したうえでパワーシフトするようにしましょう。