電気の新しい契約スタイルである実量制のプランである東京電力エナジーパートナーのスマート契約はどのような仕組みなのでしょうか。実量制の電気契約は従来、工場や会社向けに提供されていたサービスですが、電力自由化以後、一般家庭向けにもプランを出している会社が増えてきています。しかし、一般の人にとってはまだ目新しいサービスなので、「実量制」とはどのような契約なのか、今までと何が違うのかなど、知らないことも多いのではないでしょうか。そこで、実量制とはどのような仕組みかを理解するために東京電力エナジーパートナーのスマート契約(実量制)について解説します。
目次
スマート契約・実量制ってどんな料金プランなの?
スマート契約(実量制)とは、契約日から1年間のなかで最も多い電気使用量を基準として、電気の基本料金が決まる電気プランの契約です。一般家庭向けの実量制は、電力自由化がスタートした2016年以降に東京電力エナジーパートナーがスマート契約(実量制)を発表したのが最初です。
電気の使用量はスマートメーターという電力量計によって30分単位で使用量が計算され、電力会社にデータが送信されています。つまり、過去1年(その月と前の11カ月)のなかで最も電気使用量が多かった30分間(ピーク電力)が基準となり、月々の電気料金が決まるのです。実量制の電気プランとは、ピーク時に使った容量を基準とし、今まで固定だった基本料金を実際に使った実績値に合わせて毎月見直していく、というものです。ただし、契約して1年未満の場合、契約日から電気代請求月までのピーク電力が基準となります。
契約電力の決定方法(具体例)
7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | |
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当月の最大需要電力 | 60 | 63 | 65 | 59 | 57 | 57 | 61 | 60 | 58 | 56 | 57 | 58 | 59 | 58 | 57 |
過去11カ月の最大需要電力のうち最も大きい値 | - | 60 | 63 | 65 | 65 | 65 | 65 | 65 | 65 | 65 | 65 | 65 | 65 | 65 | 61 |
当月の契約電力 | 60 | 63 | 65 | 65 | 65 | 65 | 65 | 65 | 65 | 65 | 65 | 65 | 65 | 65 | 61 |
① | ② | ③ |
①X年7月は電気使用開始月のため、当月の最大電力が契約電力です。
②X年8月~Y年5月までの電気使用開始月から1年未満の場合は、当月と経過月の最大電力量が契約電力です。
③Y年6月からは、当月と過去11カ月の最大電力量が契約電力です。
電気の実量制契約の最大の特徴は、基本料金がピーク電力によって増減することです。もし、ピーク電力を低く抑えられれば、一般家庭のほとんどが契約しているブレーカー契約に比べて電気代の節約ができる場合があります。同じような実量制契約で一般家庭が契約できる電力会社は、東京電力エナジーパートナーの他に大手電力会社では、北海道電力・東北電力・関西電力・四国電力・九州電力があります。
一般家庭向け大手電力会社の実量制プラン
電力会社 | 実量制プラン | プラン名 |
---|---|---|
北海道電力 | 〇 | エネとくスマートプラン |
東北電力 | 〇 | よりそう+シーズンタイム よりそう+ナイト12 よりそう+ナイト8 よりそう+ナイト10 よりそう+ナイトS よりそう+サマーセーブ |
東京電力エナジーパートナー | 〇 | 夜トクプラン |
北陸電力 | - | - |
中部電力 | - | - |
関西電力 | 〇 | eおとくプラン |
中国電力 | - | - |
四国電力 | 〇 | でんかeプラン でんかeマンションプラン |
九州電力 | 〇 | 電化でナイト・セレクト |
沖縄電力 | - | - |
電力小売自由化以降に「使った分だけ電気代を支払う」という料金プランを販売する電力会社が登場しています。使った分だけの電気代を支払うプランがある電力会社の多くは、「基本料金が0円」などのように広告されています。この、「使った分だけ電気代を支払う」という電気プランは、実量制の電気プランとどう違うのかというと、これまでのような契約アンペアごとの基本料金がなく、電力量料金単価も一律なため、実質、実量制と同じような仕組みであるという事です。なお、基本料金0円プランを採用しているのは「Looopでんき」「あしたでんき」「楽天でんき」「ソフトバンクでんき(自然でんきプラン)」などの電力会社で販売されています。
今までのブレーカー契約とスマート契約・実量制は何が違うの?
電力小売全面自由化以前の一般家庭では、ブレーカー契約しか選択肢がありませんでした。自由化以降にスタートしたスマート契約(実量制)は、変更することで電気代の節約ができる可能性がありますが、それはなぜなのでしょうか。どのような家庭がスマート契約(実量制)に向いているのかなど確認しておきましょう。
その前に、ブレーカー契約とはどのような仕組みなのかについて触れておきます。ブレーカー契約とは、使用者が自宅で使う電気使用量を見積もって、最大でこれぐらい使うであろうアンペア(A)数で電力会社と契約をします。
ブレーカー契約での月々の料金は「基本料金+電力量料金+燃料費調整額+再生可能エネルギー発電促進賦課金」で決まります。スマート契約(実量制)と比較するうえでのポイントは、契約した時点で基本料金が固定されてしまうことです。したがって、ブレーカー契約においては、契約アンペア(A)を変更しなければ、基本料金は変わることがありません。
一方、スマート契約(実量制)の場合は、過去1年間(その月と前の11カ月)のピーク電力によって翌月の基本料金が決まります。毎月の実績値に合わせて電気代の料金単価が変動するため、ピーク電力を上手にコントロールできれば、ブレーカー契約より実績で判断した基本料金で利用するためお得に利用できる可能性があるということです。電気料金の決まり方は、ブレーカー契約の場合と変わらず「基本料金+電力量料金+燃料費調整額+再生可能エネルギー発電促進賦課金」の計算方法となり、これまで固定だった基本料金が実績に合わせて毎月変動します。
スマート契約・実量制のメリット・デメリット
スマート契約(実量制)に切り替える人のほとんどは、電気料金を節約するためです。もし、一度に多くの家電を使うことがなく、電気使用量のピークを低くできるなら、スマート契約(実量制)に変更するメリットがあるといえます。逆に、年間を通じて何度もブレーカーが落ちている人は、ピーク電力が高くなりやすいので注意が必要です。夜間蓄熱式機器やオフピーク蓄熱式電気温水器などの設備がある人は、ピーク電力が低い水準に収まりやすいので、スマート契約(実量制)に向いています。
また、スマート契約(実量制)で契約を行う場合は、必ずスマートメーターに変更になっています。ブレーカー契約では最大アンペア数が物理的に決まっているため、それをオーバーするとブレーカーが落ちてしまいます。しかし、スマート契約(実量制)ではブレーカーが落ちるようなことはありません。基本料金を抑えるために契約アンペア数を小さくししているため、毎年、冷暖房をフル稼働する時期にブレーカーが落ちやすいなどの悩みがある人にとっては、スマート契約(実量制)はメリットがあるといえます。
スマート契約(実量制)にはデメリットもあります。もし、一度でもピークを大幅に更新してしまったら、その電気量を基準に基本料金が決まってしまうことです。たとえば、自宅に友人や親戚が大勢泊まりにきて、その日だけ一時的に電気の使用量のピークが上がった場合などです。その場合でも、この日のピーク電力が基準となって翌月の基本料金が決まってしまいます。
スマート契約(実量制)は電気の使用量のコントロールが重要ですが、常にピーク電力を気にしなければならないことに、負担を感じる人もいるようです。また、家族で暮らす場合には、誰がどれだけ電気を使っているかわからず心配になることもあるでしょう。
スマート契約(実量制)契約の場合は、スマートメーターを利用しています。スマートメーターはHEMSというシステムと連携することにより電気の使い方を自宅で確認することができるため、いつ電気を使いすぎてしまったのか把握することができます。HEMSは、家庭で使用するエネルギーを一元管理できる仕組みのシステムです。HEMSの機器を設置し連携することで電気使用量のデータなどがインターネットで確認できるようになります。また、「デマンドコントロールシステム(デマンド監視制御装置)」を導入すれば、電気使用量のコントロールが簡単になります。あらかじめ、これ以下にしたいという電力使用量のピークをデマンド監視制御装置に登録しておくと、スマホで警報を受け取ったり(手動制御タイプ)、優先順位に従って自動的に通電を切ったり(自動制御タイプ)できます。導入コストは必要ですが、今後長くスマート契約・実量制の料金プランを利用していきたい人にとっては便利な設備です。それぞれの機器の導入には導入コストや工事なども含め検討しましょう。
この記事のまとめ
スマート契約(実量制)は、過去1年間のピーク電力で基本料金が決まります。電気の使い方に気をつければ電気代を節約できる可能性があることやブレーカーが落ちる心配がないのがメリットです。
- スマート契約(実量制)は、今まで固定だった基本料金を実際に使った実績値に合わせて毎月見直を行い基本料金が決定する
- スマート契約(実量制)は、ピーク電力に気をつけることで電気代を安く利用できる可能性がある
- スマート契約(実用性)は、1度ピーク時の使用量が高くなってしまうとその後の基本料金が高くなってしまうリスクがある
スマート契約(実量制)は、一度でもピーク電力が多くなってしまうとその後の11カ月の基本料金も割高になってしまうというデメリットがあります。常にピーク電力を気にしないといけないためスマート契約(実量制)契約を選択する場合には慎重に検討しましょう。スマート契約(実量制)をお得に利用するには、電気使用量をコントロールするのが鍵です。賢く電気を使って電気代を節約しましょう。