近年、電力やガスなどが自由化されるようになっただけでなく、2018年12月には改正水道法が公布されました。歴史的に、さまざまな国有事業は少しずつ民営化されてきた経緯があります。電力の民営化も実施されてきていましたが、一般家庭で自由に電力会社を選べるようになったのは、2016年の電力小売完全自由化が行われた後のことです。この記事では、なぜ電力が自由化の道をたどったのかを解説します。
電力自由化とはどういうことなの?
電力自由化が行われる前は、全国を10の供給区域に分けた各地域の電力会社(一般電気事業者)が独占して家庭や商店向けに電力供給を行うことが、電気事業法によって義務付けられていました。また、発電所の建設に伴う設備投資の資金を回収する目的や安定供給を行うために、経済産業省によって電気料金の認可制が取られていたのです。いわば、電力の安定供給と電力の独占供給、電気料金の認可制はセットだったといえます。その結果、一般家庭や商店では、電力会社をかつては自由に選ぶことができず、定められた料金を支払うしかありませんでした。
しかし、2015年6月に電気事業法等の一部を改正する等の法律が国会で可決し、2016年4月1日以降は一般電気事業者の電力供給義務が外されることになったのです。さらに、電気料金の認可制も撤廃されることになりました。ただし、電気料金を自由に設定できるようにしてしまうと、競争力が十分でなかった場合に電気料金が高騰することがないとはいえません。小売電気事業者の競争が十分に発展するまでの間は消費者保護の観点から、2020年3月までは従来の電気料金プランや認可料金制は残ることになっていました。しかし、2019年7月に2020年4月以降も経過措置料金が継続される事が決定され、終了時期は未定となっています。
電力自由化によって、さまざまな業種の企業による電力販売が可能になりました。また、これまでは特定の地域だけにしか供給ができなかった一般電気事業者も、地域の枠を超えて電力を販売することができるようになっています。新電力会社と呼ばれている一般企業も、電力小売事業に参入できるようになりました。消費者にとっては、これまでよりも安い電気料金プランを選ぶことや、新電力会社のサービス利用が可能となるなど、多くのメリットがあります。
電力自由化までの歴史
第二次世界大戦前の日本では、国家による一元的な電力管理体制でした。しかし、戦後に完全民営化となり日本を9つの地域に分割し、沖縄返還とともに日本全国10社体制として独占的に電力供給が行われてきました。そこから2016年の電力小売完全自由化まで家庭や商店などの低圧電力需要者は電力会社を選択する事が出来ませんでした。
1990年代の世界的な規制緩和の流れの中で、日本の高コスト構造・内外価格差の是正を目的に競争原理の導入が求められるようになります。そのような背景を受けて、1995年4月に電気事業法が改正されることとなるのです。その後も電気事業法改正は幾度と行われ、「電気事業については2001年までに国際的に遜色のないコスト水準を目指し、わが国の電気事業のあり方全般について見直しを行う。」(経済構造の変革と創造のための行動計画)ことを目指して2000年3月に最初の小売自由化がスタートしたのです。はじめは、大規模工場やオフィスビルなどが対象となる「特別高圧」区分から電力会社を選ぶことができるようになりました。2004年4月・2005年4月と「高圧」区分が自由化となり徐々に拡大していきます。最後に2016年4月の「低圧」区分が自由化となり電力小売完全自由化となり電力会社は自分のライフスタイルに合わせて自由に選ぶことが出来るようになったのです。
電力自由化によって何が求められているのか
電力自由化の目的は、これまで独占状態だった電力事業で、競争できる部分を競争させることによって効率を上げコストの削減を図ることです。改革を始めた当初は、工場や企業などに対しては可能でも、家庭や商店などの小規模な分野の事業者間で競争させるのは難しいという懸念がありました。しかし、東日本大震災で福島の原子力発電所で事故が起こったことから、観点が変化していったのです。エネルギー供給を大規模集中にするのではなく、地産地消や分散型の供給にすることで、社会的リスクを最小限に抑えられるという考え方が出てきました。
また、原子力発電よりも環境にやさしい再生可能エネルギーを利用すべきであるという世論も生まれてきたのです。その結果、電力自由化に進む流れとなりました。電力自由化によって、電力が確実に供給されることが求められています。特に、大規模災害が起こったときは重要です。また、電力会社の中には電力供給以外にメイン事業を行っているところがあり、メイン事業におけるサービスの向上も期待されています。サービスが向上すれば、生活が便利になるだけでなく、電力市場もより活性化していくこととなるでしょう。
この記事のまとめ
2016年4月から電力小売完全自由化になり、それまで独占状態で選べなかった電力会社を個人の裁量で決められるようになりました。電力自由化が行われた理由は、電力を供給していた会社以外に一般企業も電力業界に参入して、競争を行うことによるコスト削減と効率化です。
- 一般家庭では2016年4月以前、電力会社を自由に選ぶことはできなかった
- 東日本大震災によるエネルギー問題の影響で2016年4月以降、一般家庭でも自由に電力会社が選択できるようになった
- 自由化で電気料金の認可制も撤廃されたが、一般電気事業者は2020年以降も維持する事になっている
電力小売全面自由化によって、さまざまな料金プランが打ち出され、サービスも展開されることとなりました。たとえば、ガスと電気をセット契約することで割引が適用されるプランを用意しているところもあります。太陽光や風力発電など、化石燃料ではない方法で電力供給を行うところは、環境問題に関心のある人に人気です。また、電気の契約をすることで提携するガソリンスタンドでの給油料金が割引されたりポイントがたまるサービスをしたりするところもあります。電力会社もサービスもたくさんあり、どの電力会社やサービスが適しているかは人それぞれ異なるため、一概には言えません。これまでの契約プランを見直すことで、電気料金が安くなる可能性もあるため、ライフスタイルに合わせて選んでみてはいかがでしょうか。一括比較サイトなどを利用し現在の電気代との比較をしてみるとよいでしょう。